日銀の総資産が膨張による大規模金融緩和を手じまいしてしまう手法を開始した時に財務体質が悪化する恐れが強まってくる。日銀が日本国債購入で放出した資金は金融機関が日銀に預ける当座預金に入る仕組みで、金利水準を引き上げればその利払い費が増加するのである。最悪、日銀の自己資本8兆円が消失して債務超過に陥る恐れもあり、金融緩和を手じまいしてしまう際の障害になるのである。
もし総資産の規模を保ったまま利上げに踏み切れば債務超過もあり得るはずである。つまり日銀の収入となる「保有国債の利息」と支出となる「金融機関への当座預金の利払い費」の差額です。2017年度末の国債の収入となる利息は1兆2211億円になるが、当座預金の利払い費は1836億円。その差額の1兆円余りが日銀の収益となります。
当座預金の金利はマイナス金利政策下で+0.1~-0.1%に抑えられているが、出口戦略で金利を引き上げれば保有国債の金利(17年度は0.28%)を超え、日銀収益の差額の1兆円余りが当座預金の利払い費に全額が回され次に日銀の収益が赤字に転落となる。仮に金融機関の当座預金の金利1%利上げすれば単純計算で3兆7000億円規模の利払い費が追加で発生するため、数年で日銀の自己資本(300兆円余り)を食い潰してしまうだろう。
日銀も出口での損失に備え2015年から国債の利息収入の一部を数千億円/年の規模の枠を温存しており、国債の購入規模も減らしている。逆ざやに陥らないよう工夫して対策を取るといった見方も想定されるが実現性に乏しく感じる。
資産規模ばかり膨らみ、対策のリスクを上げているのは事実だろう。日銀は金融政策決定会合で欧米の中央銀行にならいフォワードガイダンスと呼ばれる指針を導入し、超低金利を当面続ける姿勢を明確にした。市場では2%の物価上昇目標達成は難しいとの見方が強まっており、終わりの見えない金融緩和をいつまで続けるのか改めて問われている。
日銀の資産規模を減らすため、国債の購入は中止すべきである。あるいは、政府が国債発行を減らすか国債資本規模を減らす勇気も必要となる。これが、現在の日本政府の大胆な政策による妥協が可能かどうか?不安が残る。
日銀が債務超過となることは、IMF等による貸付に至ることになる。どういう意味かはわかると思うが。